親にされて嫌だったことは、心に深く残っているものですよね。
- 勉強ばかりさせられて自由がなかった
- 兄弟には優しいのに自分の存在は無視されていた
親にされたことで心は傷ついているけれど、他人に話すこともできず、自分で癒やすこともできないと、心は苦しくてしんどくなります。
親にされて嫌だったことを話さないでいるのは、自分の心を守るためです。
そして、親の影響力は想像以上に大きいため、「話せない」状態になっているとも言えます。
辛い出来事と無理に向き合う必要はありません。
ただ、辛い気持ちを言葉にして手放してあげることで、今までより生きやすくなります。
この記事は
- 親にされたことを、誰かに話すのは怖い
- 辛い気持ちと向き合うと、感情が溢れて崩れ落ちそう
- 親に対して抱えている気持ちを手放したい
と悩んでいる人のために
ということを臨床心理士のあたるが、分かりやすく説明します。
辛い気持ちから抜け出す糸口が見つかるよ
親にされて嫌だったことを乗り越えることの難しさ
あなたが親にされて嫌だったことは、どんなことですか?
- 少しでも散らかしたり服を汚したりすると怒鳴られた
- 「お前なんか施設に入れるぞ」と脅された
- 「あの子と遊んだらダメ」と友人関係に口出してきた
- 遊びに行くのを許してもらえなかった
- ひたすら勉強をさせられた
- 自分の部屋を勝手に掃除された
- 「ばか」「産まなきゃよかった」と暴言を吐かれた
親に否定されるのはとても辛いことです。
そして親にされた嫌な体験を誰かに話そうとしても
- 自分が変な家の子だって思われたくない
- 親にバレたら大変なことになる
- 話そうとすると泣いてしまいそう
と思い、なかなか打ち明けることはできません。
これは、親の影響力が想像以上に強いものだからです。
ほとんどの人が生まれたその時から、親との環境で育ちます。
赤ちゃんはその環境で生き延びるために、親に適応しようとします。
そして、親から子どもに与えられた否定的な強い感情は、子どもの価値観や人格形成にも影響してくるのです。
たとえば、親から「しっかりしなさい!お姉ちゃんでしょ」というメッセージを受け取った子どもは、子どものうちから変に大人びていることが多いです。
「男なんだから泣くな!」など感情に向けられたメッセージを受け取ると、感情が分からなくなったり、うまく表現できなくなったりします。
また、「あなたが男の子だったらよかったのに」というメッセージを受け取ると、自分の性別に違和感を持ったり、男の子ではない自分はダメなんだと思いやすいです。
このように価値観や人格形成にまで影響を与えてくる親の存在は、思っているよりも大きいものなのです。
いざ親にされて嫌だったことを口にしようとしても、うまく言葉にならなかったり、不安や恐怖に襲われるような感覚になったりすることもあります。
今まで自分の心を守るために閉めていた蓋ですから、それを開けるのは簡単なことではありません。
辛い出来事と向き合うのが難しいのは当然なのです。
辛い気持ちを無視することによる心への影響
辛い出来事と向き合うことは難しいことです。
親にされた嫌な体験に蓋をして、自分の心を守ってきたので、そう簡単に蓋を開けることはできません。
かといって、辛い気持ちを無視し続けることは、心の傷を放置することに繋がります。
そしてその心の傷は、体の不調や心の病気、人間関係のトラブルや事件を引き起こすこともあります。
辛い過去が引き起こした事件
よくニュースで殺傷事件を犯した人について、家庭環境や生育史について取り上げられることがあります。
それだけ親との関係性は、大きくなってからの子どもの気持ちや行動に影響を与えるということです。
たとえば、2008年にあった秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大死刑囚は、母親の厳しいルールのなかで育ったそうです。
加藤死刑囚は子どもの頃、次のようなことを母親に強いられていました。
- 友達の家には遊びに行ってはいけない
- 自宅に呼んでいい友達は母親が許可した一人だけ
- 作文や絵は親が検閲する
- 誤字脱字があると最初から書き直し
- 母親の質問に10秒以内に答えられないとビンタされる
- 自由にモノは買えない
- 自由にテレビを見てはいけない
- 男女交際禁止
もちろん母親のルールが厳しかったから事件を起こしたわけではありません。
他にもいろいろな要因があったと思います。
ただ、これだけ厳しいルールのなかで過ごしていたら
- 自分は何もできない…
- 自分には価値がない…
- 自分の存在は認めてもらえてない
と感じるだろうし、怒りの発散方法も学べないまま大人になったことも考えられます。
この事件は最悪の結果で、辛い過去を抱えたすべての人が事件を引き起こすわけではありません。
子どもの頃の心の傷を癒やすことができずに、大きな事件に繋がった一つの例といえます。
自分が犯罪者になるのでは?と心配する子もいるけど、そんなことないから大丈夫
何も感じられなくなる可能性
辛い気持ちを無視すると、悲しみや怒りだけでなく、楽しい気持ちや嬉しい気持ちまで分からなくなってしまいます。
脳は特定の感情だけを選んで抑えることができません。
そのため、辛い気持ちを抑え込むと、楽しい気持ちや嬉しい気持ちも感じにくくなってしまうのです。
たとえば、勉強に厳しい親のもとで過ごしていた子が、次のように語ることがあります。
私はテストで100点取れないと親に「バカ」「なんでこんな簡単な問題間違えたんだ」と言われます。
毎日勉強漬けで自由な時間はありません。
常に気持ちが沈んでいて辛いです。
最近は楽しいことも分からなくなってきました。
自分が何のために生きているのか分かりません。
生きるのをやめられたら楽なのになと思います。
頑張っても認めてもらえず、親から否定されると心が傷つきます。
心は自分を守るために、辛い気持ちを感じないようにと感情に蓋をします。
感情に蓋をしてしまうので、楽しいことも分からなくなります。
楽しいことがなくなってしまうのは余計に辛いですよね。
無意識に親と同じことをしてしまう
親にされて嫌だったことを、自分の子どもや友達にはしたくないと思いますよね。
ただ、親からの影響力は大きいので、「同じことをしないようにしよう」と思っても、無意識にしてしまうことがあります。
たとえば、親から「言われなくても分かるでしょ」と言われて育った人が、気持ちを察してくれない恋人に「どうしてわかってくれないの?」と腹を立てることもあるでしょう。
親から毎日のように言われてきたことは、子どもの小さな心に大きく染みついています。
決して悪いことばかりではないし、必ず繰り返してしまうわけでもありません。
でも「親みたいにはなりたくない」と意識していても、無意識で親と同じことをしてしまうことがあるのです。
辛い気持ちを受け入れ、心の傷に気づくことが、自分の無意識の言動に気づくことにも繋がります。
辛い出来事と向き合い親の言動が残した傷を癒やす方法
辛い出来事と向き合う方法はあるの?
辛い出来事を感じないように考えないようにしているのは、心の傷から自分を守るためです。
そのため、親にされて嫌だったことに無理に向き合う必要はありません。
でも、「親にされたことが、今の自分に影響しているな」と気づいたのであれば、その出来事と向き合うタイミングなのかもしれません。
もし向き合う準備ができているならば、次の方法で心の傷を癒やしてください。
- STEP1心の傷に気づく
- STEP2自分の気持ちを受け入れる
- STEP3信頼できる人に話す
- STEP4本当の自分を見つめなおす
この方法は、依存症やトラウマケアの方法を参考にしています。
もっと詳しく依存症やトラウマからの回復の方法を知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください▼
STEP1:心の傷に気づく
親にされてきたことは、自分にとっては当たり前のことだったかもしれません。
「別に平気」「なんともない」と感じているかもしれません。
でも何も感じないのは、感情に蓋をしているからです。
痛みから目を逸らさないと生き延びることができなかったからです。
まずは心の傷に目を向けてあげましょう。
STEP2:自分の気持ちを受け入れる
親にされて嫌だったことで、自分はどんな気持ちでしたか?
親の影響力は大きいので「自分はダメなんだ」と自分を否定する気持ちだったかもしれません。
でも本当は
- 「なんで親の言いなりにならないといけないんだ」という苛立ち
- 「もっと自分の話も聞いて欲しいのに…」という寂しさ
という気持ちもあると思います。
どんな気持ちも感じていいのです。
自分の本当の気持ちを受け入れてみてください。
STEP3:信頼できる人に話す
辛い出来事や自分の気持ちを信頼できる人に話してみましょう。
言葉にすることは心の傷を癒やすことに繋がります。
話すことは少し勇気がいります。
- 重いと思われそう…
- どうせ話しても分かってくれない
と思うかもしれません。
でもあなたが本音を話せば、きっと相手も本気で聞いてくれます。
- 学校の先生や身近な大人
- ネット上の同じような境遇にいる友達
- 付き合っている恋人
など、自分が安心して話せる人に話してみましょう。
もし、身近に話せる人がいない場合は、カウンセリングを利用するのも一つの方法です。
カウンセリングであれば、専門家がしっかり時間をとって話を聞いてくれます。
敷居が高く感じるかもしれませんが、無料で相談できる場所もありますし、相談員は誰でも親身になってくれますよ。
無料で相談できる場所については、こちらの記事も参考にしてみてください▼
話せそうな人いないや
話すのは自分のタイミングでいいんだよ
口に出すのが難しかったり、話せる相手がいなかったりするときは、とりあえず紙に書くという方法があります。
ノートやスマホのメモ帳などに、自分の気持ちを書き出してみましょう。
文字にすることで、今まで考えていたことや自分の気持ちが目に見える形になり、少し気持ちが整理できます。
また、書いて吐き出すことで、気持ちがスッキリする効果も得られますよ。
- いきなり専門機関に相談するのはハードルが高い…
- 近くに相談できる人がいない…
そんな人は、X やInstagramで気軽にDMください。
無料で相談に乗っているよ
また、アバターを使ってボイスチャットやテキストチャットでお話できる、バーチャル談話室も開室しています。
バーチャル談話室は、「cluster」というアプリ内に作られた、メタバース上の談話室です。
誰でも無料で利用できるので、気軽に遊びに来てくださいね。
バーチャル談話室について、詳しくはこちらの記事を読んでみてください▼
STEP4:本当の自分を見つめなおす
親の影響力は強いので、親から否定的な言葉をもらっていたら、「自分はダメなんだ」という考えが染みついているかもしれません。
でもあなたはあなたでいいのです。
- 親の言うような自分でなくていい
- 自分の感情は思ったまま出していい
- 自分は存在しているだけでいい
子どもっぽくてもいいし、泣いてもいいのです。
「自分は自分でいいのだ」と思うことがポイントです。
親に支配された自分ではなく、自分自身を生きればよいのです。
あなたは存在しているだけでOKなんだよ
今まで蓋をすることで自分を守っていたから、急に蓋をとるのは不安なものです。
自分で辛い過去の事実を認めるためには、安心できる場所が必要です。
自分で自分を支えるには重すぎる出来事ですから、少し他人を頼って支えてもらいましょう。
「安心できる場所はない」という人は、こちらの記事も読んでみてください▼
まとめ:辛い気持ちを話して過去を手放そう
親にされて嫌だった辛い出来事は、心に傷を刻みます。
辛い出来事を誰にも話さず抱えているのは、自分の心を守るためです。
親の存在は思っている以上に大きく厄介ですが、親の影響を受けていることに気づいたのであれば、その辛さを手放すタイミングかもしれません。
心の傷に気づき、本当の気持ちを受け入れて、自分の存在を認めてくれる安心できる場所で、親にされて嫌だったことと向き合ってみましょう。
辛い出来事を手放すことで、自分が自分として生きられるようになりますよ。
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