辛いことがあったとき、恋人を頼りたいけど、うまく頼れないことってありますよね。
恋人に重いと思われたり、迷惑をかけたりするのは嫌ですし、好きだからこそ嫌われたくない気持ちもあると思います。
今まで一人で頑張ってきた分、頼り方が分からないという人もいると思います。
でも、恋人に頼ることは自然なことです。
適度な依存は、心の安定感をもたらすので、「頼りすぎたらどうしよう…」という心配もいりません。
そして、恋愛は自分の心も成長させてくれます。
この記事では
- 辛い時に恋人を頼ってもいいの?
- 恋人を頼るって具体的にどうしたらいいの?
- 恋人に依存してしまってもいいの?
と悩んでいる人のために
ということを、臨床心理士のあたるが、分かりやすく説明します。
恋人とさらにいい関係が築けるよ
「頼る」とは気持ちを素直に伝えること
頼るってどういうこと?
思っていること、感じていることを言葉にすることだよ
恋愛において「頼る」とは、気持ちを素直に伝えることです。
「頼る」を辞書で引くと、次のように書かれています。
1.たのみとする、つてを求めて近づく
2.助けとして用いる、依存する
引用元:goo辞書
つまり、助けが必要な時や困った時に、サポートしてもらうことが「頼る」ということです。
恋愛においても「頼る」というのは、辛い時や何か手伝って欲しいことがある時に、恋人にサポートを求めるということです。
ただ、相手は人間なのでコミュニケーションをとる必要が出てきます。
辛いことは言葉にして伝えないと伝わりません。
何か手伝って欲しいことも、口に出さなければ分かりません。
そのため、恋人に頼るというのは、気持ちや思っていることを言葉にして、素直に伝えることだといえます。
恋人に頼れない理由
頼ることがどういうことか分かっていても、恋人に頼ることができないという人もいますよね。
甘えるのが苦手で、頼り方が分からないという人もいると思います。
恋人に頼ることが難しいのには、過去の経験や個人の性格、恋人との関係性などが影響しています。
恋人に頼れなくさせるさまざまな要素のうち、次の4つの理由についてみてみましょう。
要求が通らない環境で生きてきた
小さい頃から自分の要求や意見が受け入れてもらえない環境で過ごしてきた人は、自分の願いを表現したり他人に頼ることが難しいと感じやすいです。
「どうせ言っても無駄だ」
「助けてもらえるわけがない」
「自分なんかがこんなお願いをしてはいけない」
このような気持ちが出てきて、他人を信じることができず、自分の願いを伝えたり、思っていることを表現するのが難しくなっています。
そのため、恋人に対しても頼ることができなくなっているのです。
恋人に頼ることを拒否されてきた
過去に何度も恋人に頼ろうとして、拒否されたり冷たい反応をされた経験があると、その後は頼ることが怖くなります。
「頼ったことで関係が悪くなったらどうしよう」
「冷たくされてまた傷つくのが嫌だ」
と不安になり、自分の気持ちを伝えるのをためらってしまいます。
頼ること自体が怖く感じられ、自然と頼ることを避けてしまうのです。
完璧にできない自分が許せない
自己評価が厳しい人は、完璧に物事をこなせない自分を許せないことがあります。
「自分で全部やらなければ」
「誰にも弱さをみせたくない」
と考えて、他人に頼ることができません。
恋人に頼ることは、自分が完璧ではないことを認めることにも繋がるため、頼ることが難しくなっているのです。
恋人に嫌われることが不安
恋人に頼った結果、嫌われてしまうのではないかという不安も、大きな障害となります。
「頼ることで迷惑をかけたくない」
「頼ったことでウザい彼女と思われたくない」
と、恋人の負担になることを心配してしまいます。
恋人との関係を大切に思うからこそ、自分の気持ちを伝えられないのです。
結果的に、頼ることを避け、恋人の前では明るく振る舞います。
多くの人が恋人を頼る理由
みんなは彼氏を頼ってるの?
年代によって頼りたい相手は変わっていくみたいだよ
高校生から大学生にあがるにつれて、辛い時は恋人を頼るという人は増えていきます。
「恋人は頼ったり頼られたりする関係だ」と思っている人は多く、恋人に頼りたいと思う気持ちは自然なものなのです。
高校生や大学生にとったアンケート調査を参考に、詳しくみてみましょう。
大学生を対象とした実態調査
恋人への依存の研究で、大学生にとったアンケート調査では、恋人との関係の捉え方について
恋人に気持ちをわかってほしいや恋人に心配してもらいたいなど期待する学生が多い。
また、恋人といると安心し、相互に頼ったり頼られたりしている関係でいると思っている学生が多かった。
引用元:恋人への依存性と親子関係との関連性
という結果が出ています。
さらに
恋人に甘えない、頼らないという学生は比較的少なかった。
引用元:恋人への依存性と親子関係との関連性
という結果もあり、恋人同士で頼ったり頼られたりしている大学生が多いといえます。
恋人を頼らないという人は少なかったよ
つまり、誰かに頼りたい時は、好きな人、彼氏、彼女を頼っている人が多いのです。
高校生を対象とした実態調査
高校生を対象とした調査では、大学生を対象とした調査とは少し違う結果が出ています。
愛着対象の移行についての研究のなかで、恋人がいる高校生にとったアンケート調査では
「近接性の維持(近くにいたい、一緒にすごしたいと思うのは誰か)」
「安全な避難場所(動揺したときや落ち込んだときに頼りたいのは誰か)」
「分離不安(離れたくない、離れているとき寂しいと思うのは誰か)」
「安全基地(近くにいて、必要なときに助けてくれると思うのは誰か)」
引用元:青年期に起こる愛着対象の移行における親の位置づけ
という質問内容で
「安全な避難場所」を除いた他の3つの機能について恋人が最も高い割合で選択されていた(31.6%~55.3%)。
「安全な避難場所」の対象として最も選択されていたのは友人であった(44.7%)。
引用元:青年期に起こる愛着対象の移行における親の位置づけ
という結果が出ています。
高校生の場合は、動揺したときや落ち込んだときは友人を頼りたいと思っている人も多く、恋人には頼りづらいと思っているのかもしれません。
恋人との関係はまだまだ模索中だよね
「頼れる友達がいない」「相談できる人がいない」と悩んでいる人は、こちらの記事も読んでみてください▼
恋人という親密な絆が安心感を生む
なんでみんな恋人に頼るの?
恋人は親密な関係性にあたるからだよ
誰かに頼りたい時に、頼る相手として「恋人」を挙げる人は多いです。
それは、家族という戸籍のつながりを考えなければ、他人のなかで親密な関係性にあるのが「恋人」だからです。
そのため、恋人を頼りたくなるのは自然な心理です。
レヴィンジャーとスヌークは、人と人との関係性には下の図のような段階があることを、親密化理論でいっています。
つまり、一番親密な関係というのが、「親友、恋人」になるのです。
そして、親密度の高い関係性の方が、相談したり頼ったりしやすいですよね。
全然知らない人を頼ることはあまりないよね
もちろん、辛い時には身近にいる家族を頼るという人もいるでしょう。
ただ、家族には頼れない場合もあります。
家族に受け入れてもらえず、愛情をもらえないと、家族以外に愛情を求めるしかなくなります。
そのため、一番親密度の高い「恋人」を頼るのです。
頼りたいと思う気持ちは自然なこと
愛情なんて求めてないよ
誰かに受け入れられたいって気持ちは自然なものだよ
「愛情」と聞くとこそばゆく感じて、「そんなものいらない」と思うかもしれません。
でも、愛情欲求はマズローの欲求5段階説にもあるものです。
心理学者のマズローは、欲求5段階説で次のようにいっています。
「食べたい、眠りたい」という欲求がある程度満たされれば、「安心して安全に暮らしたい」という欲求が出てきます。
「安心して安全に暮らしたい」という欲求がある程度満たされれば、「友達や家族、社会に受け入れられたい」という欲求が出てきます。
そして「友達や家族、社会に受け入れられたい」という段階では
という気持ちが出てくるのです。
辛いことがあった時、自分の力だけではどうにもできない時、一人で悩みを抱えていると、孤立感が出てきます。
自分の気持ちは理解されない…
誰も自分を助けてくれない…
そう感じるのは、寂しいものです。
「一人ぼっち」は不安を高め、誰かに受け入れられたいという欲求は強くなります。
そのため、辛い時は「誰かを頼りたい」と思うのです。
もし、誰かに頼りたい気持ちを出さずにいるとどうなるでしょうか?
- 自分だけで悩みを抱えて心がパンクする
- 心に蓋をして我慢することで自分の感情が分からなくなる
一人で抱え込むことで、精神的にまいってしまいます。
だから、頼りたいという当たり前の気持ちは、外に出していいのです。
「頼る」と「依存」の違いとは
恋人に頼れるようになると、今度は恋人に依存していないか心配になります。
「依存」はあまり良いイメージがないため、依存はしたくないと思いがちですよね。
でも「依存」は悪いことばかりではありません。
むしろ、適度な依存は自立に必要なものなのです。
境界線は恋人がいなくても生きれるか
「頼る」と「依存」って何が違うの?
それがなくても生きれるかどうかかな
「頼る」と「依存」の違いは、それがなくても生活が成り立つかどうかです。
それぞれの意味を辞書で引くと
「頼る」とは
1.たのみとする、つてを求めて近づく
2.助けとして用いる、依存する
引用元:goo辞書
「依存」とは
他に頼って存在、または生活すること
引用元:goo辞書
「頼る」の意味が「依存する」?
言葉だけ見ると分かりづらいから、例を挙げてみるね
例えば、花と蜂の関係を考えてみてください。
花は、蜂が蜜を集めるために自分のところに来てくれるのを待っています。
蜂が花にやってくると、蜂は花の中の花粉を他の花に運んでくれます。
これによって花は受粉し、種を作ることができるのです。
花は蜂に頼っていますが、蜂は来なくても風や他の昆虫によっても受粉することができるため、蜂がいなくても生きていけます。
これが「頼る」という状態で、蜂がいると助かるけれど、いなくてもなんとかなるということです。
一方で、蜂は花の蜜を集めて自分の食べ物にしています。
花がないと蜂は食べ物を得ることができず、生きていくのが難しくなります。
蜂は花に完全に依存しているのです。
花がないと蜂は生きていけない、これが「依存」という状態です。
いなくても生きていけるかどうかがポイントなんだね
つまり、恋人に依存しているかどうかは、恋人がいなくても生きていけるかどうかです。
恋人がいないと生きていけない状態では、生活にも支障が出てきます。
例えば
- 恋人から連絡が返ってこないと何も手につかない
- 恋人と別れるくらいなら死んだ方がマシと考える
という場合は、恋人に依存しすぎているかもしれません。
恋人に依存していると感じた人は、少し視野を広げて、友達付き合いや趣味など、外の世界にも関心を向けてみてください。
恋人を頼ると心が安定する
頼りすぎて依存しないか心配
適度な依存はいい影響もあるよ
恋人に完全に依存してしまうのは心配ですが、適度な依存は心の安定をもたらします。
依存のスタイルは人それぞれで、恋人への依存性に関する研究では
引用元:青年期後期の恋人への依存性に関する研究
- 恋人に対して信頼関係をもとに依存することで安定感を得られている
- 恋人への依存を回避している
- 恋人に依存することで安定感を得ているものの、分離に強く不安を抱いている
という3つのスタイルがあげられています。
適度に依存する人もいれば、過剰な依存で心の安定感を得ている人もいるのです。
ただ
恋人に過剰に依存している者は、恋人の存在が心の中の大部分を占めており、恋人との関係に満足しているようであった。しかし、恋人以外の他者との関係が希薄化している可能性も考えられた。恋人だけに過剰に依存している者が、恋人を失ったときに、精神的健康を保てなくなるのではないかという危うさも示唆された。
引用元:青年期後期の恋人への依存性に関する研究
とあるように、恋人だけに過剰に依存すると、恋人を失った時に精神的に不安定になることが考えられます。
恋人に依存しすぎると、心の支えがなくなったとき崩れ落ちちゃうかも…
だから、恋人以外との繋がりも大切にしておくとよいでしょう。
恋人を頼る時の具体例と注意点
実際に恋人を頼る時、どのようにしたらいいでしょうか?
具体的な例と注意点をみてみましょう。
具体例:素直な気持ちの伝え方
具体的には、次のようなことで「恋人に頼りたい」と思うことが考えられます。
- 一緒に帰りたい
- 勉強を教えて欲しい
- 寝る前に電話したい
- 愚痴を聞いて欲しい
- 進路について相談したい
- 体調が悪いので食べ物を買ってきて欲しい
恋人とやりたいことや「こういう風にして欲しい」ということを、素直に言葉にして伝えることが「頼ること」に繋がっていきます。
いきなり頼ることが難しそうであれば、まずは気持ちを伝えてみましょう。
「あなたと一緒に遊べて楽しかったよ」
「優しくしてくれて嬉しいな」
など、気持ちが伝えられるようになったら、小さなことから頼ってみてください。
「ちょっとペンを貸してくれない?」
「高いところにある箱を取って欲しいんだけどお願いできる?」
など、自分にとってハードルの低いことから頼ることで、「恋人に頼っても大丈夫なんだな」と思える体験が積み重ねられると思います。
少しずつ弱音を吐いたり相談ごとをしたり、精神的な部分でも頼ることができるようになっていくといいですね。
注意点:望み通りにはならないこともある
素直に気持ちを伝えても、期待通りにならないこともあります。
例えば、何か頼み事をしても
「今忙しいから後にして」
と断られることもあるかもしれません。
悩みごとをただ聞いて欲しかっただけなのに
「それはキミにも悪いところがあったんじゃない?」
と言われてしまうかもしれません。
望み通りにならないと、恋人は自分のことが好きじゃないんじゃないかと心配になりますよね。
でも、恋人も同じ人間。
疲れている時や調子の悪い時もありますし、相談ごとによかれと思ってアドバイスしてくれることもあります。
ただ、あなたが恋人を頼ろうとしたことは決して無駄ではありません。
恋人とのさまざまな経験は自分自身の心の成長にも繋がります。
恋愛による自己成長のプロセス
恋愛することは、心の成長によい影響をもたらします。
好きな人がいると、ちょっとしたことで喜んだり悲しんだりして、心が振り回されるように感じることがありますよね。
だから、「恋愛って疲れるだけで何もいいことがない」と思うかもしれません。
でも、心理学的な視点でみると、恋人は「自分」を築くのに重要な存在であったりします。
たとえば、恋愛関係による影響についての研究では、恋愛の影響について次のようなものがあげられています。
恋愛関係にある者はない者よりも自尊心が高く、充実感が高く、抑鬱が低かった。
引用元:青年の恋愛関係と自己概念及び精神的健康の関連
影響を与えられた対人関係観は多様であるが、主なものとして、本音を率直に語る、相手に配慮して行動するなどが挙げられていた。
引用元:恋愛関係が青年に及ぼす影響についての探索的研究
恋愛は、自尊心や充実感を高めてくれたり、本音を語ることや相手への配慮に影響を与えてくれたりするのです。
恋人との関係がいい影響を与えてくれるんだね
また、「自分らしさ」に関する研究では
女性は重要な他者とのつながりを維持し、その中で葛藤に直面することを通して自己を確立していく
引用元:「個」と「関係性」からみた青年期のアイデンティティに関する研究の動向と展望
と示されていて、恋人との関係の中で葛藤しながら「自分らしさ」を確立していくことが分かります。
そのため、恋人は「自分」を築くのに重要な存在であり、「自分」を支えてくれる存在といえるのです。
まとめ:恋人に頼ることが自立に繋がる
好きな人に嫌われたくないからこそ、頼っていいのか悩むことがあると思います。
今まで要求を伝えても叶わないことばかりだったかもしれません。
恋人に頼ろうとしても拒否されてきたかもしれません。
周りの期待に応えてきた分、完璧にできない自分が許せなくなっているかもしれません。
でも、もっと気持ちを素直に伝えていいのです。
適度な依存は心を安定させてくれます。
恋愛は心を成長させてくれます。
それは、相手にとっても同じです。
だから、心配せずに恋人を頼ってください。
相手にとっては、自分が心の支えになっているはずですから。
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