夜になると、嫌なことが頭の中をグルグル回って、眠れなくなることありますよね。
私も夜にネガティブ思考が止まらなくて、眠れなくなった時期がありました。
寝たいのに眠れないのは、体力的にも精神的にもしんどいものです。
実は、夜の脳のはたらきが、私たちをネガティブな気持ちにさせて、グルグルと回るネガティブ思考を連れてきているのです。
この記事では
- 夜になると気持ちが沈んでしんどい
- 夜に寂しくなったり、ネガティブ思考が止まらなくなったりする
- ネガティブな考えのせいでよく眠れない
と悩んでいる人のために
ということを、臨床心理士のあたるが分かりやすく説明します。
これを読めば、眠りにつきやすくなるかも
体を安静にしていても脳は思考を止めない
人は何もしていない安静時でも、自発的な脳活動が計測されます。
これを「安静時脳活動」といいます。
安静時脳活動が発見されたのは、1990年代のことで、現在もfMRIなどを使った研究が多くされています。
しかし、何のために安静時も脳が活動しているのか、どんな働きをしているのかは、まだ解明されていません。
ただ、この脳の働きのせいで、夜、体を休めている時に、あれこれ考えてしまっている可能性もあります。
脳についてはまだまだ分からないことがたくさんあるんだ
安静時脳活動については、この論文に最近の研究がまとめられているので、興味のある方は読んでみてください▼
「考えない」を難しくさせる「マインドワンダリング」
突然ですが、試しに今「何も考えない」ことをしてみてください。
ナニモカンガエナイ…
何も考えないようにしているのに
- 明日の準備しなきゃ…
- 昨日友達とこんな話したな…
- 美味しいものが食べたいな…
などと、いろいろな考えが湧いてきますよね。
何もしていない時に限らず、授業中や仕事中などでも、いつの間にか関係のないことを考えていることがあります。
このような思考のさまよいを「マインドワンダリング」といいます。
マインドワンダリングは多くの人が経験するもの
私たちは起きている間の少なくとも30%から46.9%もの時間、マインドワンダリングを経験しています。
このマインドワンダリングは、安静時脳活動についての論文でも「ナイーブな仮説」として取り上げられています。
何もしていない時でも色々な考えが自然に頭の中に浮かんでは消えていくような状態が、多くの人にとって実感できる安静時状態だろう。(中略)こういった安静時の心の状態についての想定は、内省に基づくものだが、それだけに自分が日々体験する感覚と合致しており、多くの人にとって受け入れやすいものである。実際、このナイーブな描像は多くの神経科学者に現在でも受け継がれておりMind Wonderingと表現されている。
引用元:公開データベースを利用したヒト安静時脳活動研究
マインドワンダリングの考えは、1890年頃から心理学者ウィリアムジェイムズによって、「思考の流れ」と表現されてきたものです。
みんなが経験する感覚であり、長く受け継がれている考え方なんだね
マインドワンダリングはネガティブ感情を強める
やっていることと無関係な思考に注意が向いてしまう「マインドワンダリング」ですが、実はこの現象がネガティブ感情を強めるといわれています。
マインドワンダリングには、良い面と悪い面があって、京都工芸繊維大学の梶村先生は様々な研究結果から次のようにまとめています。
このように、マインドワンダリングは心の機能に悪影響をもたらすこともあるのです。
また、マインドワンダリングがネガティブ感情を強め、ネガティブ感情はマインドワンダリングを強めるというように、双方向に関係しているということを明らかにした研究もあります。
Young and restless:validation of the Mind-Wandering Questionnaire (MWQ) reveals disruptive impact of mind-wandering for youth)
つまり、夜眠ろうと横になったときに、マインドワンダリングが生じるせいで、ネガティブ感情が強まっている可能性があるのです。
あれこれ考えて気分が沈むことが、研究でも証明されているんだね
ネガティブ感情がネガティブ思考を連れてくる
ネガティブ感情が沸き起こると、思考もネガティブな方向に引っ張られていきます。
これは心理学の「気分一致効果」という理論で説明されます。
気分一致効果とは
その時の気分や感情に合った情報や事柄に目を向けやすくなる
というものです。
ポジティブな気分のときは、物事の良い面が見えやすくなり、ネガティブな気分のときは、物事の悪い面が見えやすくなるのです。
そのため、ネガティブ感情の時には、過去にあった嫌なことや失敗を思い出しやすくなります。
そして、ネガティブ感情がさらに強まり、自分を責めて余計に落ち込むこともあるのです。
過去の失敗を思い出すと、記憶だけでなく感情もセットでついてくるよね
ネガティブ思考が止まらない原因は現実と目標のズレにある
ネガティブ思考がずっと頭の中グルグルしてる…
ネガティブなことって繰り返し考えちゃうよね
なんでネガティブ思考って止まらなくなるんだろう?
ネガティブ思考がグルグルと頭の中で繰り返される要因はいくつか考えられますが、そのひとつに現実と目標の不一致があるといわれています。
自分の目標に近づくために、何度も頭の中で同じことを考えてしまうのです。
いくつかの研究をもとに分かりやすく説明するね
ネガティブ思考を繰り返すことを「反すう思考」という
気分が落ち込んでいると
- 「どうしてあんなことをしてしまったんだろう」
- 「もっとこうすればよかった」
- 「相手を傷つけてしまったかもしれない…」
などと、繰り返しネガティブに考え続けることがあります。
この思考スタイルを「反すう思考」といいます。
反すう思考には次のような特徴があります。
- 反すう思考は、ネガティブな気分にさせる
- ネガティブな気分の時、反すう思考が生じやすい
- 夕方から夜にかけて経験することが多い
- 食事や趣味をしている時は生じにくい
- 夜に反すうを経験している人は、眠りにつきにくい
反すう思考についてまとめられた論文で
反すう思考によって生じたネガティブな気分がさらなる反すう思考を生じさせていることによって反すう思考が持続することが考えられる。
引用元:持続要因に着目した反すう研究の動向
と書かれているように、反すう思考がネガティブ気分を引き起こし、そのネガティブな気分は反すう思考を生じさせるという循環が起きています。
これは、ネガティブな気分のときには、ネガティブな記憶が思い出されやすいという「気分一致効果」の理論で説明できます。
そのため、グルグルと同じことを繰り返し考えてしまうのです。
「気分一致効果」については、前にも出てきたね
現実と目標のズレを解消させるために「反すう思考」が生じる
では、なぜ反すう思考が起こるのでしょうか?
反すうは何らかの目標、さらに現実状態との不一致を認識し目標状態に近づくために生じていることが考えられる。
引用元:持続要因に着目した反すう研究の動向
いくつかの研究で「反すうは現在の状態と目標とする状態の不一致を認知するときに生じるもの」ということが示されています。
つまり、自分の目標と現在の状態にズレがあって、その目標に近づくために、何度も同じことを繰り返し考えているのです。
反すう思考は目標と現実のズレを解消させようとしているんだね
心の病気の可能性もゼロではない
夜になると気分が落ち込んだり不安が高くなる原因に、病気が隠れていることもあります。
心の病気が悪さをするせいで、ネガティブな考えが頭から離れなくなっている可能性もあるのです。
たとえば、不安障害やうつ病、睡眠障害などは、気持ちを落ち込ませたり、眠りにつくのを困難にさせたりすることがあります。
一度、児童精神科や心のクリニックで医師に相談してみてください。
受診して病気じゃなかったとしても、対処法を一緒に考えてくれるはずです。
そんなに構えずに相談して大丈夫だよ
ネガティブ思考を止める3つの対処法
ネガティブ思考がなぜ繰り返されるのかは分かったかな?
「マインドワンダリング」とか「反すう思考」が悪さしてるんでしょ
病気が隠れていることもあるけど、それぞれ対処法も研究されてるから一緒にみてみよう
ネガティブ思考を繰り返す原因となっている「マインドワンダリング」や「反すう思考」の対処法については
マインドワンダリングの制御には、マインドフルネストレーニングが有効である
引用元:マインドフルネス、注意制御機能、マインドワンダリングおよび感情の関連
目標と現実状態の不一致を認識した際に、目標達成に向けて行動することや目標の修正を行うことが有効である
引用元:持続要因に着目した反すう研究の動向
と示されています。
少し難しい言葉も出てきましたが、ここでは分かりやすいように、次の3つの対処法を紹介します。
自分がリラックスできることをする
リラックスできることや楽しいと思えることをやってみましょう。
たとえば
- 10数えながら深呼吸をする
- 音楽を聴く
- 温かい飲み物を飲む
- 好きな漫画を読む
など、自分の心が落ち着く方法や好きなことを試してみてください。
マインドワンダリングのコントロールに効果的なマインドフルネスは、「今、ここ」に注意を集中させるもので、少し難しいかもしれません。
ですが、「数を数えながら深呼吸をする」ということであれば、できそうな気がしませんか?
また、反すう思考は、食事や趣味をしている時は生じにくいという特徴がありました。
なので、好きな音楽を聴いたり、漫画を読んだりすれば、繰り返されるネガティブ思考が弱まるかもしれません。
自分の悩みを具体的に考える
ネガティブに考えている事柄について、自分なりに分析しながら、現在の自分の状態や目標を具体的にしてみましょう。
- 何が自分を落ち込ませているのか
- どんな自分になりたいのか
- 自分が持っている信念や思い込みはないか
ネガティブ思考がグルグルと繰り返されている時、その悩みは抽象的であることが多いです。
悩みについて具体的に考えていくと、そのグルグル繰り返される思考から抜け出せるかもしれません。
反すう思考は、目標と現実のズレによって生じているので、目標と現実を擦り合わせていく作業が必要なのです。
信頼できる人に話してみる
自分が信頼できる人に、考えていることを話してみましょう。
話すだけでも気持ちが楽になることもありますし、解決への糸口が見つかるかもしれません。
話す人がいなければ、紙に書き出すのもよいです。
頭の中のネガティブ思考を、外に吐き出すことで、スッキリしたり頭の中が整理されたりします。
まとめ:夜にネガティブ思考が止まらない原因は脳にあった
体を安静にしていても「安静時脳活動」という、脳の活動は続いています。
何も考えないようにしても、「マインドワンダリング」はネガティブな感情とともにやってきます。
そして、「反すう思考」がネガティブ思考をグルグルと繰り返して、止めようとしません。
そのため、夜はネガティブ思考が止まらなくなります。
このネガティブ思考を止めるには
- 好きなことに注意を逸らす
- 悩みについて具体的に考える
- 誰かに話してネガティブな気持ちを吐き出す
という方法があります。
簡単には止められないかもしれませんが、自分に合った方法を探してみてくださいね。
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