家の手伝いを毎日していると
「これって子どもの私がやるのが当たり前なのかな?」
「テスト前も体調が悪い時も家事は自分でやらないといけないのかな?」
と疑問に思いますよね。
- 買い物、料理、掃除、洗濯などの家事
- 祖父母の介護
- 幼いきょうだいの面倒
- 親の精神面のサポート
このような家族のお世話をしている18歳未満の子どものことを「ヤングケアラー」といいます。
ヤングケアラーは、「子ども」としての時間が減ってしまうため、社会的にも支援しようとする動きがあります。
「家族のお世話は当たり前だから、すべて自分がやらないといけない」と思わなくていいのです。
この記事では
- 幼いきょうだいの面倒をみていて自由な時間がない
- 家事がなかなか終わらず寝る時間がとれない
と悩んでいる人のために
を臨床心理士のあたるが、分かりやすく説明します。
一人で抱え込まないでいいんだよ
ヤングケアラーとは家族のお世話をする子ども
まずは「ヤングケアラー」とは何かを説明します。
ヤングケアラーの定義
厚生労働省はヤングケアラーを
本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと
引用元:ヤングケアラーについて|厚生労働省
と定義しています。
ヤングケアラーが担うケアとは
ヤングケアラーは
- 買い物、料理、掃除、洗濯などの家事
- 幼いきょうだいの世話
- 障がいのあるきょうだいの世話
- 目を離せない家族の見守り
- 障がいや病気のある家族の身の回りの世話
- 障がいや病気のある家族の入浴やトイレ介助
- 家族の通訳
- 家計を支えるための労働
- 家族の話を聞いて元気づける
- 病院への付き添い
- 金銭管理
- 薬の管理
- 経管栄養のケア
といったケアを担っています。
ヤングケアラーがケアをしている家族は、親や祖父母だけではありません。
きょうだいの世話をしている子どもも「ヤングケアラー」といえます。
特にひとり親家庭の場合、大人の手が不足しがちなので、子どもが家族の世話を担うことが多いのが現状です。
親は仕事で忙しいことが多いよ
ヤングケアラーという言葉の誕生
世界のなかでも、一番はじめにヤングケアラーに注目したのは、イギリスです。
イギリスでは、1980年代末からヤングケアラーの実態調査や支援が行われてきた。
引用元:ヤングケアラー―介護を担う子ども・若者の現実|澁谷智子
その後、1993年にケンブリッジ大学教授のソール・ベッカー氏が論文で、ヤングケアラーに関する問題点を指摘し、社会問題として認識されるようになりました。
日本で社会問題として明るみに出始めたのは、2015年頃です。
全国の小中学校や特別支援学校にアンケート調査をしたところ、ヤングケアラーの存在が分かったのです。
そして、2020年3月に毎日新聞がヤングケアラーについて記事に取り上げてから、少しずつテレビやSNSでも話題となり、広まってきました。
- 日本テレビ『24時間テレビ』(2020.8.22-23放送)
- 短編映画『陽菜のせかい』(2021.12.18公開)
- NHK『ヤングケアラーSOSなき若者の叫び』(2022.5.13公開)
- ドキュメンタリー『自助の国に生きる~ヤングケアラー、その先に~』(2022.5.29放送)
- ドラマ『リエゾン―こどものこころ診療所』(2023.2.17放送)
きょうだいの世話をするヤングケアラー
ヤングケアラーの中には、幼いきょうだいや、病気や障害のあるきょうだいのお世話をしている子どももいます。
厚生労働省の令和2年度の中学2年生を対象とした調査によると、世話を必要としている家族として「きょうだい」と回答した割合が、61.8%と最も高いです。
また
病気や障害を持つ兄弟・姉妹がいる子どものこと
を「きょうだい児」といい、ヤングケアラーをテーマとした短編映画『陽菜のせかい』でもとり上げられています。
きょうだいの世話をしているヤングケアラーは多いよ
ヤングケアラーが「子ども」として過ごせない影響
家族の手伝いやお世話をすることは、当たり前のことだと思うかもしれません。
もちろん、ケアすることが悪いわけではないですし、やりがいを感じている人もいるでしょう。
ただ、子どもの頃に家族の介護や世話をすることには
- 甘えたい時期に甘えることができない
- 学業に支障がでて、自己評価がさがる
- 知識がなかったり気を遣ったりして、困っていてもSOSが出せない
といった問題があります。
つまり、「子ども」として過ごす時間がなくなってしまうことで、さまざまな影響が出る可能性があるのです。
甘えたい時期に甘えることができない
子どもは大人に守られて過ごす時期です。
- 体調が悪いからゆっくり休みたい
- 兄弟のことばかりでなく自分のことも認めて欲しい
- 学校で嫌なことがあったから話を聞いて欲しい
と思うのは自然なことです。
しかし、家族のために遠慮したり、自分の気持ちを言えない雰囲気だったりすると、甘えることは難しくなります。
甘えることができないことによって
- 気持ちが不安定になりやすくなる
- 自分の気持ちをうまく表現できなくなる
- 他者との親密な関係が築きにくくなる
といった影響が出る場合があります。
学業に支障がでて、自己評価がさがる
家族の手伝いやお世話をしていると、勉強をする時間が削られてしまいます。
勉強していても手伝いのことで頭がいっぱいだったり、睡眠不足だったりして集中できないこともあるでしょう。
勉強する時間がなくなると、成績がさがったり授業についていけなくなったりして
「みんなができていることが自分はできないんだ…」
と自己評価の低下に繋がります。
困っていてもSOSが出せない
家族の手伝いやお世話は、子どもが全部引き受ける必要はありません。
でも
- 親に言われたことは全部やらないといけない
- 親が精神的に弱いので相談することはできない
- 兄弟のことで大変なんだから自分が頑張らないといけない
という想いがあると、なかなか助けを求めたり、誰かに相談したりすることは難しくなります。
家の手伝いやお世話のことに限らず、学校や仕事で困ったことがあっても、人に頼ることはハードルが高く感じるようになります。
また、子どもが親の役割を担ったり、親の顔色をうかがって過ごしたりすることで「アダルトチルドレン」の特徴をもつこともあります。
アダルトチルドレンについては、こちらの記事で詳しく説明しています▼
≫【完全版】アダルトチルドレンとは?原因・特徴・治療法を専門家がまとめて解説
自己肯定感がさがったり、人を頼るのが苦手になったりするんだね
ヤングケアラーのための支援制度
家族の手伝いやお世話をしていると、「子ども」として過ごす時間がなくなり、さまざまな影響が出てきます。
そのような家族の支援をして、ヤングケアラーの負担が少しでも軽くなるようにと、国もサポート体制を整えようとしています。
- 家事、育児の支援サービス
- 介護サービス
- SNSやオンラインを活用した相談体制
など、使える制度も増えていくと思います。
- 自分の自由な時間がない
- 睡眠時間が足りない
- ケアしている家族について話せる人がいない
と感じている人は、もっと周りの手を借りていいのです。
一人で全部やろうとしなくていいのです。
まずは信頼できる人に相談してみてください。
ヤングケアラー当事者同士が交流できる団体もあります。
詳しくは、厚生労働省のホームページを見てみてくださいね。
まとめ:家の手伝いも相談していい
ヤングケアラーは、大人が担うと想定されている家事や家族の世話をしている子どものことです。
「この程度の手伝いはヤングケアラーとはいえないかもしれない」と思うかもしれませんが、どんな手伝いでも、負担に感じているのなら周りの人に相談してみてください。
夜中徘徊するおじいちゃん、やんちゃ盛りの弟、精神的に不安定なお母さん…
家族のお世話をしている子どもはたくさんいます。
そして、大人が支援するべきケースもたくさんあります。
「自分がやらなきゃいけない」「自分の要領が悪いだけ」と思わずに、人を頼っていいのです。
まずは、信頼できる身近な人に、話をしてみてくださいね。
「信頼できる人がいない」「相談できる人がいない」と悩んでいる人は、こちらの記事も読んでみてください▼
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