先生や友達に「理解が遅い」と指摘されると、落ち込みますよね。
他にも
- 「内気だね」とよく言われる
- 行事やイベントで疲れやすい
といったことで悩んでいませんか?
これは、あなたがHSPだからかもしれません。
「HSP」とは、敏感な気質を持った人のことです。
ネット上に溢れるHSPの情報を見て、「自分もHSPかも…」と悩む人もいます。
さまざまな生きづらさをHSPに紐づけて、HSPをネガティブに捉えがちですが、HSPの気質は悪いものではありません。
例えば、最初に挙げた「理解が遅い」という特徴も、情報を深く処理しているだけなのです。
この記事では
- HSPってなに?
- HSPの特徴はどんな影響を与えるの?
- 自分の生きづらさはHSPのせい?
と悩んでいる人のために
を臨床心理士のあたるが分かりやすく説明します。
自分の気質を受け入れられるようになるよ
- HSPとは生まれつき敏感な人
- HSPの自己診断テスト
- 1.周囲の些細なことによく気がつくと思う
- 2.他人の機嫌に影響される
- 3.痛みにとても敏感だ
- 4.忙しい日は、ベッドや暗い部屋、もしくはプライバシーを確保できて刺激から解放される場所に引きこもりたくなる
- 5.カフェインに対して敏感だ
- 6.まぶしい光、強いにおい、粗い生地、近くから聞こえるサイレンなどにすぐ反応する
- 7.豊かで複雑な内面世界を持っている
- 8.大きな音が苦手である
- 9.芸術や音楽に心を大きく揺さぶられる
- 10.良心的である
- 11.すぐに驚く
- 12.短時間でたくさんやることがあると混乱する
- 13.誰かが居心地の悪さを感じていると、その理由を察し(明かりを調整したり、席を変えたりして)心地よくしてあげようと思うことが多い
- 14.一度にたくさんのことをやるよう言われると困ってしまう
- 15.失敗や忘れ物をしないよう、とても気をつけている
- 16.普段から暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
- 17.周囲でいろいろなことが起こると動揺してしまう
- 18.極度の空腹によって強い反応が引き起こされ、集中力や気分がそがれる
- 19.環境の変化に動揺する
- 20.繊細な、あるいは良質なにおい、味、音、芸術作品を堪能する
- 21.動揺や混乱を引き起こすような状況を極力避けて生活している
- 22.仕事で誰かと競ったり、評価されたりすると、普段より緊張して動揺してしまう
- 23.子供のころ、親や教師から繊細、あるいは内気だと思われていた
HSPとは生まれつき敏感な人
HSPとは
The Highly Sensitive Person (とても敏感な人)
のことを指しています。
頭文字をとってHSPなんだね
HSPは
- 全人口の15~20%(5人に1人がHSP)
- セロトニンやドーパミンに影響を及ぼす遺伝子の問題
- 刺激を受容する感度が高い
- わずかな刺激に対する処理の仕方が他の人と違う
というもので、病気や障害ではなく、生まれつきの気質です。
かつて
- 内気
- 恥ずかしがり屋
- 引っ込み思案
と呼ばれていた気質からネガティブなイメージを払拭し、本質を捉えるために、心理学者のエレイン・N・アーロン博士が提唱しました。
- アメリカの臨床研究心理学者
- HSPを提唱
- 感覚処理の感度をテーマに研究
- 自身もHSP
エレイン・N・アーロン博士が著書「敏感すぎる私の活かし方」で
あなたが自分の性質を前向きにとらえられるようになっていれば幸いだが、私としては良くも悪くもない、ニュートラルなものとして受け止めることをお勧めする。
引用元:敏感すぎる私の活かし方|エレイン・N・アーロン著
と言っているように、HSPはネガティブなものではありません。
人より敏感で、たくさんの刺激を処理しているのです。
HSPの自己診断テスト
私はHSPなのかな?
ひとまずセルフチェックしてみよう
自分がHSPかどうか気になる人は、次の自己診断テストをやってみてください。
少しでも当てはまるなら「はい」、そうではないなら「いいえ」と答えてくださいね。
HSPには内向型・外向型などの4つのタイプがある
HSPは、「内気」「恥ずかしがり屋」とも呼ばれていた気質から、「内向的」だと思われることが多いです。
しかし、HSPのうち30%は外向的だといわれています。
この内向的・外向的という特徴から、HSPは次の4つに分類されます。
- HSP
- HSS型HSP
- HSE(Highly Sensitive Extrovert)
- HSS型HSE
アルファベットが並んで分かりづらいので図を見てみてね
この区別は、エレイン・N・アーロン博士のオフィシャルサイトで、カウンセラーのジャクリーン・スティックランド氏が述べているように、混同しやすいです。
そのため、HSPは内向的な人ばかりではないという理解で、十分かと思います。
HSP
刺激を求めない内向型のHSPです。
約70%はこのタイプに該当します。
内向的で敏感な気質を持っています。
HSS型HSP
刺激を求める内向型のHSPです。
好奇心旺盛で、安全であればいろいろなことに挑戦します。
ただ、刺激がストレスになるのは、HSPの気質として持っているので、適度な休息を必要とします。
HSE(Highly Sensitive Extrovert)
刺激は求めないけど、とても敏感で外向的なHSPです。
この概念は、エレイン・N・アーロン博士と一緒に活動している、カウンセラーのジャクリーン・スティックランド氏が「内向型、外向型そしてHSP」という記事で詳しく説明しています。
社交的で、人との交流が好きですが、敏感なので、些細なことによく気づいてストレスになることもあります。
刺激を求めないタイプのため、あまりリスクなく行動できます。
HSS型HSPと似てるね?
どちらも「内」に向かうことが必要だけど、HSEは外の世界からのエネルギーも必要なんだよ
HSS型HSE
刺激を求める外向的なHSPです。
ジャクリーン・スティックランド氏によると、大半のHSEはHSS型の可能性が高いんだって
好奇心旺盛で、周りに気を配ることもできて、リーダーシップをとることもあります。
ただ、敏感な分、疲れやすく、後からぐったりしてしまいます。
HSPの特性「DOES」とは
HSPの特徴は、次の4つにまとめられます。
- D(Depth of Processing)「処理の深さ」
- O(Overstimulation)「刺激に過敏」
- E(Emotional Reactivity)「情緒的反応」
- S(Sensing the Subtle)「些細なことにも気づく」
この特徴は、内向型にも外向型にもあてはまるものです。
D(Depth of Processing)「処理の深さ」
HSPは他の人と比べて、情報を深く処理します。
「深く」というのは、過去の体験と比較したり、関連づけたりして考えているということです。
そのため、他の人より処理に時間がかかります。
だから、「理解が遅い」「物分かりが悪い」と誤解されてしまいがちです。
でも、深く処理できるおかげで、ミスが少なく、丁寧に仕事ができるという良い面もあります。
O(Overstimulation)「刺激に過敏」
HSPは刺激に対する感度がとても高いです。
景色や音、人混みやパーティで人より多く刺激を感じ、すごく疲れてしまいます。
ちょっとした刺激もキャッチするので、なるべく刺激を受け取らないようにと、内にこもることもあります。
ただ、病気や障害と違って、余計なことが気になるわけではありません。
人の表情や社会の変化に敏感なのです。
そのため、いろいろなことに気づくことができるという良い面もあります。
刺激に過敏な分、人より疲れやすいのですが、適度に休むことで対処できます。
E(Emotional Reactivity)「情緒的反応」
HSPは、感受性が豊かで、表情にも敏感に反応できます。
これを聞くと、人の怒った表情や悲しい表情を察知して、機嫌をとったり慰めたりすることを想像するかもしれません。
でも、どちらかというと、幸せそうな顔を見たときの影響の方が大きいです。
人が幸せそうなのを見て、自分も幸せな気持ちになれるのです。
S(Sensing the Subtle)「些細なことにも気づく」
HSPは周囲の些細なことによく気づきます。
これは、HSPが刺激を受け取ったときに、言葉の微妙な意味を汲み取る脳の領域が活発になるからです。
例えば、友達の具合が悪いことに気づいたり、何かいいことがあったのだと分かったりします。
そのため、周りに気配りができたり、相手が何を求めているかを汲み取ったりすることができます。
HSPのいいところ
敏感さのおかげで、HSPには、いいところがたくさんあります。
例えば
- 些細なことにも気づくので、ミスが少なく、仕事が丁寧
- 相手の表情にも敏感なので、人に優しくできる
- じっとしているのが得意で、深く集中できる
ということが挙げられます。
HSPが鈍感な人をうらやむように、敏感に周りのことを気づけない人は、このスキルを持ち合わせていないのです。
だから、HSPであることを嘆く必要はありません。
HSPの生きづらさ
HSPにいいところがある反面、敏感さは、生きづらさに繋がることもあります。
例えば
ということが挙げられます。
人前で話す時や大事な試験の時に過度に緊張する
刺激に敏感なため、物事に対して過剰に反応してしまいます。
身体の反応としては
- 顔が赤くなる
- 手が震える
- 心臓がバクバクする
- お腹が痛くなる
といったものがあげられます。
このような反応は「恐怖」とか「不安」と意味付けがちですが、そうとも限りません。
HSPは生まれつき敏感な気質を持っているので、ちょっとした刺激でも処理するために、身体は必死に働くのです。
その結果、上に挙げたような反応がでます。
だから、必要以上に怖がらなくて大丈夫です。
すごく緊張するのは、身体が頑張っている証拠なんだよ
長時間労働や人混みが苦手
仕事に限らず遊びでも、人がいるところには刺激がたくさんあります。
HSPは人より刺激を受け取りやすいので、長い時間働いたり、誰かと一緒にいたりすると、疲れてしまいます。
人と一緒にいることは嫌いじゃないけれど、一人になりたくなるのです。
これは外向型HSPも同様で、回復することや休養するために、人のいないところに行きたくなります。
体調を崩しやすい
敏感なのは人に対してだけではありません。
物質やストレス、ウイルスに対しても敏感です。
そのため
- コーヒーを飲むと頭が痛くなる
- ストレスで腹痛や不眠になりやすい
- 風邪をひきやすい
- アレルギー反応が出やすい
ということもあります。
評価される場面で実力を発揮できない
刺激に敏感だと、人に見られていたり、時間を計られたりすると、そのことが気になります。
その結果、実力が発揮できないことも多いです。
実際は分かっていることも、大事な場面で発揮できないと、残念ながら「理解が悪い」と思われてしまうこともあるのです。
内気だと思われがち
HSPは敏感なだけで、内気な性格ではありません。
でも、周りからはよく「内気だね」と言われます。
そして、自分自身も「内気」だと思い込み、自分のことを
- 怖がり
- 弱虫
- 不器用
と捉えて、ネガティブに考えがちです。
内気になるのは、敏感な分、失敗が気になるからです。
敏感だと人より緊張したり、実力が発揮できなかったりして、失敗してしまうこともあります。
そして、「今度こそ失敗しないぞ」と思うと余計緊張して、また失敗してしまいます。
これを繰り返していると、自信がなくなり内気にもなります。
生きづらさは、HSPとの付き合い方が分かれば解決できるよ
HSPの対処法
敏感さを「生きづらさ」と感じているのは、自分の気質をうまく対処できていないからかもしれません。
人と同じように振る舞わなくてもいいのです。
次の3つの対処法をとることで、HSPの生きづらさは解消できます。
- 休息をとる
- 心が動揺した時の対応策を考えておく
- コミュニケーションパターンを身につける
休息をとる
疲れたら休みましょう。
横になって、眠くなったら眠ってください。
遊ぶことも休息に繋がります。
好きなゲームをしてもいいですし、本を読んでもいいです。
何も考えずにボーっと座るのも心が休まります。
一人になって、しばらく内にこもって、また外に出たくなったら出かけていけばいいのです。
心が動揺した時の対応策を考えておく
物事に過剰に反応して、動揺した時にどうするかを、あらかじめ考えておきましょう。
例えば
- 好きな音楽を聴く
- 深呼吸をする
- 刺激を遮断する壁をイメージする
- 「身体が刺激に反応してるだけ」と言い聞かせる
などが挙げられます。
コミュニケーションのパターンを身につける
些細なことが気になると、コミュニケーションがとりにくくなることがあります。
そのため、場面ごとに自分のとる行動をパターン化してみましょう。
例えば
- お喋りの時は、話し手になるか聞き手になるか決めておく
- 人へのお願い事は、なるべく早く片付ける
- 重要なことや人前での発表は、紙に書きだして、メモを見ながら伝える
- グループ活動では、黙っていると余計に注目されるので、適度に相槌を打つ
というように、普段困ることの多い場面は、自分なりのパターンを決めておくとよいです。
HSPにとって幼少期の影響は大きい
小さい頃に育った環境というのは、どんな子にとっても影響を与えます。
しかし、HSPは親からのメッセージも敏感に受け取るため、その影響はより大きくなります。
適度に気持ちを汲んでもらいながら、愛情を注がれて育てば、自分の優れた気質を理解し、親にしてもらったように敏感さを対処できます。
怒られてばかりで、あまり大事にされずに育てば、自分の気質は受け入れられず、落ち込み、不安が高まります。
私はひどい環境だったよ
つらかったね
でもこれから気質を受け入れていこう
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HSPを受け入れる4つのステップ
HSPをネガティブなものとして捉えている人は、次のステップを試してみてください。
- STEP1HSPだと自覚する
HSPについて理解し、自分の敏感さは生まれつきのものだと自覚する。
- STEP2過去を捉えなおす
過去の失敗や怒られた経験は、自分のせいではないと捉えなおす。
- STEP3心の傷を癒やす
小さい頃から負ってきた心の傷を、対話やプログラムのなかで癒やす。
- STEP4自分を認める
人と交流してもいいし、一人でこもってもいい。どんな自分も受け入れる。
STEP1:HSPだと自覚する
まずは、HSPについて理解します。
そして、自分がHSPであることを自覚します。
これまで感じてきた生きづらさは、持って生まれた「敏感」という気質のせいだったのです。
STEP2:過去を捉えなおす
自分がHSPだと分かると、過去の失敗も「敏感」という気質が影響していたと気づけます。
親や先生に理解されなかったこともあるかもしれません。
失敗ばかりする自分が嫌になったかもしれません。
でもそれは、自分の気質を周りが気づかなかったせいで起きたことです。
自分を責める必要はありません。
STEP3:心の傷を癒やす
小さい頃、敏感さに気づかれずに過ごした場合、傷つき体験は多くなりやすいです。
心の傷は、不安やうつ症状にも繋がります。
そのため、心の専門家や、専門的な知識の力を借りながら、傷を癒やす作業が必要です。
同じように敏感さを抱えた人と話すことも、手助けになります。
STEP4:自分を認める
心の傷が癒えると、少しずつ自分の敏感さも受け入れられるようになってきます。
自分の気質と付き合いながら、自分自身を認めていってください。
内にこもったり、外に出たり、じっくり考えたり、どんな自分もOKです。
「理解が遅い」と言われても、早く答えを出そうとする必要はありません。
自分の気質を生かして、丁寧に仕事をこなせばいいのです。
まとめ:HSPは長所にもなる気質
HSPは人より敏感なため、人の表情や言葉から、些細なことも気づくことができ、物事を深く処理します。
刺激に過敏なせいで、人前で緊張したり、疲れやすかったりする一見ネガティブな側面もあります。
しかし、適度に休息をとったり、動揺した時の対処法や、コミュニケーションの取り方を考えたりしておくと、生きづらさは解消できます。
HSPという気質を嘆くのではなく、認め、受け入れていいのです。
HSPのよさを最大限生かせるように、しっかり休みつつ、外へと出かけていきましょう。
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