とても辛いことが起こると、過去の傷は現在の自分にも影響を与えます。
- 自分の気持ちが分からない
- 対人関係がうまくいかない
という悩みは、原因が見えづらくて、苦しくなりますよね。
実はそれは、トラウマの症状かもしれません。
トラウマとは、心に受けた大きな傷のことです。
そして、トラウマはいくつかの問題をもたらします。
この記事では
ということを、臨床心理士のあたるが分かりやすく説明します。
自分の症状を整理できるよ
トラウマの3つの主症状
トラウマの症状としては、主に次の3つが挙げられます。
- 再体験
- 回避・麻痺
- 過覚醒
再体験
「フラッシュバック」や「悪夢」などで、トラウマの出来事を再体験します。
フラッシュバック:まるで今起きている出来事かのように、生々しく再体験する。
悪夢:眠っているときに再体験する。
回避・麻痺
自分にとって危険な場所を避けたり、自分の記憶や感覚を切り離したりします。
これは、フラッシュバックが起きるきっかけを避けたり、何も感じないようにしたりすることで、自分を守ろうとしているのです。
例えば、学校で嫌な出来事があったから、学校の友達とも会うのが嫌なので一歩も家から出ないようにします。
好きなことをして「楽しい」と感じたり、風にあたって「気持ちがいい」と感じたりすることもできなくなります。
行動範囲が極端に狭まり、トラウマ体験と直結しているわけではない、いろいろな感情をも失うのです。
麻痺するのは辛い感情だけじゃないの?
ピンポイントでは切り離せないから、他の感情も全部感じられなくなるんだよ
また、解離という症状もあります。
解離:自分と自分の身体を切り離し、自分ではないようにすることで、自分を守ろうとする。
これらの症状は
- 感情がコントロールできなくなる
- 自己破壊的な行動をする
- 対人関係がうまくいかなくなる
といった障害をもたらします。
過覚醒
過覚醒は
- 眠れない
- イライラする
- 攻撃的になる
- 集中ができない
ということが起こります。
これらは、身体が「危険だよ」という信号を送り、警戒状態が続くためです。
常にアンテナを張った状態になり、気が休まることがありません。
トラウマになりうる出来事
トラウマとなって現在まで影響を及ぼすのは、大きな心の傷となる出来事です。
例えば
- 虐待
- 性暴力
- 犯罪被害
- 交通事故
- 自然災害
などが挙げられます。
これらには、一度の打撃によるトラウマと、長期的に繰り返されたことによるトラウマがあります。
それぞれ症状の出方が少し違いますが、どちらも3つの主症状のいずれかが現れます。
脳はトラウマを急速冷凍する
なぜ心に負った大きな傷は、トラウマ記憶となって私たちを苦しめるのでしょうか?
それは、脳の記憶の仕方に関係があります。
トラウマとなる出来事を、脳は処理せずそのまま冷凍保存します。
なぜなら、その出来事はとてもショッキングで、処理するには大きすぎるからです。
そして、イメージの記憶をつかさどる右脳にドカッとそのまま保存されます。
そのため、何年経っても鮮明なままだし、言語的な記憶をつかさどる左脳とは違って、言葉になりにくいのです。
冷凍保存されてるから、フラッシュバックで生々しく蘇ったり、「過去の出来事」になりにくかったりするんだね
トラウマケアに必要なのは語ること
トラウマは、安心・安全な場所で語ることがケアに繋がります。
処理されないまま冷凍保存されていたトラウマ記憶は、語ることで整理されて、「過去の出来事」になるのです。
ただし、トラウマケアについては、専門家の力を借りる必要があります。
トラウマを語ることは、危険を伴うからです。
そのため、病院やカウンセリングルームなどの相談機関で相談してみてください。
相談窓口を検索する方法が知りたい人は、こちらの記事を参考にしてください▼
また、トラウマケアについてもっと知りたい方には、『赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア』という本がオススメです。
この本では、次のようなトラウマケアの方法が書かれています。
- ステップ0「トラウマ」を知る
症状だと気づき、「トラウマ」の症状や影響を学ぶ。
- ステップ1記憶想起の過程の主体者になる
安全な場所で、トラウマ記憶を再生したりストップしたりする。
- ステップ2記憶と感情の統合
トラウマ体験で感じた気持ちを吐き出す。
- ステップ3感情耐性
感情に名前をつけて、その気持ちを受け止める。
- ステップ4症状統御
症状が出るきっかけが何かを探る。
- ステップ5自己尊重感とまとまりのある自己感
自分のことを肯定的に捉えなおす。
- ステップ6安全な愛着
他者とニュートラルな関係を作る。
- ステップ7意味を見出す
トラウマ体験の意味を捉えなおす。
物語調だから読みやすいよ
この本で
トラウマ治療というと、過去の傷を治すことだと思っている人がいるかもしれません。また過去にばかり目をやってどうするのかと批判する人もいます。でも、それは違います。
過去を変えることはできません。
回復するということは、「過去の傷に影響を受けている今」が変わることなのです。
引用元:赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア|白川美也子著
と書かれているように、トラウマケアは「今」と向き合うことです。
まずは、自分が安心して、安全でいられる場所を探して、過去の出来事に傷ついた今の自分をケアしていきましょう。
まとめ:トラウマを理解することで症状と向き合える
トラウマには
- 再体験
- 回避・麻痺
- 過覚醒
という主症状があります。
トラウマ記憶から自分を守るために、感情を麻痺させたり、人間関係を避けたりするのです。
脳はトラウマ記憶を冷凍保存しているため、症状を取り除くには、この記憶を処理しなおす必要があります。
安心・安全な場所で何度も語ることが、トラウマ記憶を「過去の出来事」にする方法であり、傷ついた今の自分のケアに繋がります。
安心して語れる安全な場所を見つけて、心の傷を癒やしましょう。
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