誰も信用できない…体験談からその理由と解決のカギを探る

自分のこと

信用できる人がいないと感じると、ひとりぼっちな感じがして、人が怖くなり、苦しいですよね。

自分以外は敵に見えることもあるけれど、実は「誰も信用できない」と感じている人はたくさんいます。

そして、信じられる経験が「誰も信用できない」気持ちを変えてくれます。

この記事では、

  • 誰のことも信じられない
  • 自分以外がみんな敵にみえる

という人のために

  • 信頼感は親との関係のなかで育まれる
  • いじめや裏切り体験は信じる力を失わせる
  • 信じられる大切な人との出会いが解決のカギ

ということを、臨床心理士のあたるが分かりやすく説明します。

あたる
あたる

孤独感が和らぐよ

この記事を書いた人
\あたるです/

誰も信用できなくなった6つの体験談

「誰も信用できない」と感じるのには、何かきっかけがあると思います。

そのきっかけは、人それぞれ異なります。

今回、「誰も信用できない」と感じた経験についてアンケートをとりました。

20代~50代の男女30人に聞いたところ、さまざまな体験談が集まったので、そのうちの6つを紹介します。

友達に裏切られいじめられた

(中学生の頃)幼馴染で私は親友だと思っていた友達が、陰で私の悪口を言っていることが分かりました。
親友だからと思って彼女を信頼して話したことも、全部みんなに話していました。
そして、有る事無い事言いふらされ、私はいじめの標的になりました。
弁解しても、誰も信用してくれませんでした。
それからは誰も信用できなくなってしまって、学校にも行けなくなってしまいました。
(40代 女性)

私は小学3年生の頃、転校した事を機にイジメられるようになってしまいました。新しい環境でどう振舞っていいのか分からずに、大人しくしていたからだと思います。そんな時に一人、クラスメートで私に優しく話しかけてくれる女の子が居たので、不安な気持ちなどを話してみたら、それを他のクラスメートに話して、それから更に酷いイジメにあうようになってしまって凄くショックでした。
(50代 女性)

突然父親がいなくなった

両親の離婚
親戚の家に泊まりに行ってそこから帰宅すると父親がいなくなっていた
私以外の家族、親戚は離婚の話を知っていたが私だけ事後報告だった
(40代 男性)

大好きな祖母のために貯めたお金が空っぽになっていた

小さい頃から祖母が大好きでした。いつもイライラしている母親が苦手で、優しくていろんなところに連れて行ってくれて美味しいおやつをたくさん食べさせてくれる祖母の方が一緒にいて心地よかったからです。私は大好きな祖母のためにおこづかいやお年玉を貯めていました。腰が痛い、肩が痛い、後先短いから美味しいものが食べたいといつも言っている祖母のために自分のものを買わずに頑張っていたのです。小学校の頃、ようやく貯金箱に10万円がたまりました。そのお金でマッサージ付きの高級旅館に旅行に行ってもらおうかと考えていたのですが、その事を伝えた次の日、思いがけないことが起こりました。なんと、貯金箱の中身が空っぽになっていたのです。その時祖母に言われたのは、「あなたの貯めてくれたお金は協会にあなたの名前で寄付してきた、おばあちゃんは鼻が高くてうれしいよ」高学年に差し掛かる頃でした。だんだん祖母の実態がわかってきました。私は宗教施設に連れまわされていて、都合よく使われていたのです。美味しいと思っていたお菓子はお供え物の一部や賞味期限切れのお菓子でした。不機嫌な母親は自分の親(祖母)への怒りと諦めを胸に私につらく当たってスッキリしていました。
(50代 女性)

信頼していた父親の裏切り

16歳で摂食障害になり入院。以降30年に渡り通院や入院を繰り返して来たが、今まで唯一信頼できると思って頼りにして来た父親が、二年半前くらいに豹変。今まで散々母親を責め続けた人が突然母親は女神様だと涙を流して語り始めた。それまでわたしが母親に対してやってしまったことが取り返しつかなくなり初めて本気で怒りを覚えた。あれほどの裏切りは無かったと思うが、最近になると記憶がフラッシュバックして来て父親から性的な虐待があったことを思い出した。最悪の人間だったことに唖然とした。確かに今まで男性関係はなく、父親しか信じない人間として成長してしまった。悔やまれてならない。
(40代 女性)

親友との恋愛トラブル

小学校からの幼馴染とずっと仲良しだったが、ある時共通の友人から、その友達が私の好きだった人と昔付き合っていたことを聞いた。その人のことは友達にも相談していたのに、私に内緒で付き合っていたことがとてもショックだった。一番の親友に裏切られた。
(30代 女性)

信じる気持ちはどう育まれるのか?

「誰かを信用できない」と感じるということは、以前は人を信じることができていた、または、人を信じるということを当たり前に感じているということになります。

では、誰かを信じるという気持ちはどのようにできていくのでしょうか?

「信じる」とは本当だと思い込むこと

「信じる」を辞書で引くと、次のように書かれています。

  1. 本当だと思い込むこと。
  2. 神や仏などを敬い、身をまかせること。信仰すること。
引用元:辞典オンライン国語辞典ONLINE.

「本当のこと」ではなく、「本当だと思い込むこと」なのです。

たとえば、白雪姫は親切な老婆に変装した魔女が「このリンゴは安全だ」と言うのを信じて毒リンゴを食べてしまいます。

「このリンゴは安全だ」というのは、本当のことではありません。

しかし白雪姫は、親切な老婆が言うことだからと、本当だと思い込んで食べてしまうのです。

このように、「信じる」とは本当だと思い込むことを言います。

親との関係が信頼感を育てる

「誰かを信じる気持ち」というのは、赤ちゃんとしてこの世に生まれてから、母親や養育者との関係のなかで育まれていきます。

生まれてすぐの赤ちゃんは、「誰も信じられない」という気持ちを抱くことはありません。

まだこの世の中がどういうものか分からず、人間が信じられる存在なのかどうかも未知なのです。

そのなかで

  • 泣いたら抱っこしてもらえる
  • お母さんが空腹を満たしてくれる
  • 不安な気持ちを安心に変えてくれる

という体験を積み重ね、少しずつ「人は信じられる存在なんだ」「この世の中は安心できるんだ」ということが分かっていきます。

これはアタッチメントという概念を提示した、児童精神科医ボウルビィの内的ワーキング・モデルという理論で説明できます。

ボウルビィは内的ワーキング・モデルを「人や世界との持続的な交渉を通じて形成される世界、他者、自己、そして自分にとって重要な他者との関係性に関する表象」と定義しており、人はワーキング・モデルに助けられて出来事を知覚し、未来を予想し、効果的な行動計画をたてることができると述べている。

引用元:アタッチメント―子ども虐待・トラウマ・対象喪失・社会的養護をめぐって―|庄司順一・奥山眞紀子・久保田まり

つまり、安心できる体験が積み重ねられず、乳幼児期から

  • 泣いても誰も助けてくれない
  • お母さんは分かってくれない
  • 不安な気持ちはずっとなくならない

ということが繰り返されると、信頼感は育たず、「誰も信用できない」という感覚を抱くようになるのです。

また、ボウルビィは次のようにも述べています。

望まれない子どもは、“自分は両親によって望まれていない”と感じるだけではなく、本質的に望まれるに値しない、つまり、“自分は誰からも望まれない”と信じるようになるし、逆に、両親から愛されている子どもは、両親の愛情に対する確信だけでなく、他のすべての人からも愛されると確信して成長する

引用元:アタッチメント―子ども虐待・トラウマ・対象喪失・社会的養護をめぐって―|庄司順一・奥山眞紀子・久保田まり

親との関係は、他の人との関係にも大きく影響し、乳幼児期の積み重ねは大切だといえます。

誰も信用できなくなる2つの原因

「誰も信用できない」と感じるきっかけは人それぞれですが、その原因は次の2つに分けられます。

乳幼児期に信頼感を育むことができなかった場合と、人を信じる気持ちは抱けていたけれど、きっかけがあって信じることができなくなった場合です。

それぞれ具体的にみてみましょう。

家庭環境の問題

親との関係が信頼感を育てる」の項目で書いたように、信頼感は親との関係によって育まれます。

そのため、乳幼児期に

  • お世話をしてもらえなかった
  • 安心、安全な環境ではなかった
  • 親が嘘ばかりついていた

というような環境で過ごしていると、そもそも「人は信じられる存在だ」という気持ちが育たず、「誰も信用できない」と感じるようになります。

幼い頃、家でしんどい思いをしてきた人は、「アダルトチルドレン」という概念が心をラクにしてくれるかもしれないので、こちらの記事も読んでみてください▼

いじめなどのトラウマ

ある程度のアタッチメント形成ができていても、他者に対する信頼感を否定されるトラウマはその後の反応に違いが出る可能性がある。地域紛争、いじめなどはその代表であろう。

引用元:アタッチメント―子ども虐待・トラウマ・対象喪失・社会的養護をめぐって―|庄司順一・奥山眞紀子・久保田まり

とあるように、赤ちゃんの頃から母親との関係ができ、安心や信頼感を抱くようになったとしても、トラウマ体験は「誰かを信じること」を難しくさせます。

たとえば

  • いじめ
  • 虐待
  • 裏切り
  • 恋愛関係のトラブル
  • 詐欺
  • 痴漢

などを経験すると、「誰も信用できない」と感じるようになります。

特に小学校~高校の時期は、スクールカーストが目立つようになり、友達グループができたり、友達と秘密を共有したりするようになります。

周りから自分がどう見えるかを意識するようになるので、周りの目が気になります

「学校」という場所が生活のすべてのような時期でもあり、親友や大切な人に裏切られる経験は、心に大きな傷を負わせます。

今回集めたアンケートでも、親友や大事な家族、恋人に裏切られたことがきっかけで「誰も信用できない」と思うようになったという回答が多く寄せられました。

期待を裏切られる体験は、信じる力を失わせるのです。

トラウマについて詳しく知りたい人は、こちらの記事も読んでみてください▼

人を信用できないことによる影響

「誰も信用できない」という感覚は、心理的な影響だけでなく、生活にも支障をきたすことがあります。

アンケートの回答をもとに

という視点で、どのような影響があるかみてみましょう。

感情面、心理的な影響

「誰も信用できない」と思うと、心に負担がかかります。

今回アンケートに回答してくれた、「誰も信用できない」経験がある人は

  • 疎外感
  • 孤独感
  • 疑心暗鬼
  • ネガティブになる
  • 自分が悪いと思う
  • 諦めと絶望
  • 情緒不安定
  • 自分以外はみんな敵
  • 陰口言われているのではないかと思う
  • 適応障害になる

というような感情を抱いていました。

あたる
あたる

しんどい感情ばかりだよね

対人関係の影響

「誰も信用できない」というのは、相手との関係性のなかで起こります。

そのため、対人関係での影響も大きく

  • 本音を話せなくなる
  • 人を避ける
  • 他人に攻撃的になる
  • 悩みを相談できない

といった状況が生まれます。

このような影響により、人間関係がさらに悪化し、孤立感や不信感が深まりやすくなります。

あたる
あたる

うまくいかない人間関係が精神的な負担をさらに大きくするよ…

行動面の影響

心や関係性の問題だけでなく、行動面でも影響がでます。

  • 積極性がなくなる
  • 学校に行けなくなる
  • 成績が落ちる

というように、日常生活に支障をきたすこともあります。

行動面での影響は、将来への不安や自己評価の低下にも繋がり、心理的な負担がさらに大きくなることもあります。

あたる
あたる

目に見えて分かる影響もあるんだよね

誰かを信用できるようになる方法

「誰も信用できない」と感じると、心理的な影響だけでなく、対人関係や行動面でも影響が出て、生きづらくなります。

では、一度「誰も信用できない」と思ってもまた、誰かを信じられるようになるのでしょうか?

アンケートの回答を見てみると、信用できる人の存在が、「誰も信用できない」気持ちを変えているのが分かります。

信用できる人との出会いが解決へのカギ

再び誰かを信用できるようになるには、「信じても大丈夫」という経験が必要です。

赤ちゃんが親を信じられる存在が確認するように、信用できる人との出会いによって、「人は信用できる」ということを再確認できます。

「誰も信用できない」という気持ちが変化した5つの体験談をみてみましょう。

信頼できる人に出会って、何でも話せるような関係になっていった時に、感覚が変わっていきました。
(50代 女性)

実家を出て祖母・母親と距離を置いたことがきっかけです。就職する前に研修が長引き、帰宅が遅れて祖母と母親にこんな会社はやめろと叱責され、社長さんに勝手に退社連絡をされたのですが、その事がきっかけでとても良くしてもらえて、信用してもいい大人がいることを知りました。高校受験の頃は学校の先生も「どうせこいつは宗教の子だから関わらない方がいい」と距離を置かれていたので些細な優しさが身に染みました。
(50代 女性)

全ての人が信じられない状態だったが、今の奥さんと出会ってだんだんと人を信じられるようになった。
(40代 男性)

中学まではイジメられていた同級生たちと同じ学校だったので学校に行くのが嫌でたまらなかったのですが、高校は離れた場所にある所を選んでいったので、新しい環境で過ごすことが出来るようになりました。そしてその高校で私を受け入れてくれて、一緒に楽しく過ごす事が出来る友達が出来て、その子達と一緒に色んな事を楽しめるようになって、徐々に人を信じられるようになって行きました。
(50代 女性)

私の話を我慢強くしっかり聞いてくれて、寄り添ってくれた先生のおかげで、少しづつ閉じこもった生活から抜け出せました。
その後、クラスメイトから手紙を貰いました。
その手紙に「いじめを止められなくてごめんね」って書いてあって、私のことを信じてくれている人がいたことが分かって、その手紙をくれたクラスメイトと話したり、一緒に勉強したり、遊んだりするうちに、だんだん信頼する気持ちを取り戻せました。
そのクラスメイトとは、40代になった今も仲の良い友達です。
(40代 女性)

このように、信用できる人との出会いが、「誰も信用できない」という認知を変え、信頼感を取り戻させてくれるのです。

信頼感を取り戻すのは簡単なことではない

信用できる人との出会いは、誰かを信じてみようという気持ちに導いてくれます。

しかし、人を信用する気持ちは簡単に取り戻せるものではありません。

実際に、アンケートに回答してくれた人のなかには、今も誰も信用できないと答えた人もいました。

時間と環境が解決してくれたように思う。その人達と離れ、新たな出会いの中で自分から距離を縮めていくことで、信頼できる人を探すようになった。が、今もいつ誰が突然、裏切るか、態度を変えるかはわからないと思っているので、根底から人を信じられなくなってしまった。
(50代 男性)

今も誰も信用してない
上辺だけで信じたふりをしているだけ
(40代 男性)

人を信じる気持ちは、長い時間をかけて少しずつ取り戻していくものなのです。

そのため、無理に取り戻そうとしなくても大丈夫です。

今は焦らずに自分が安心できる場所や状況を大切にしてください。

そうすればきっといつか「信頼できる」と感じられる人と出会えるはずです。

まとめ:信じるのも信じられないのも積み重ね

誰かを信じる気持ちは、赤ちゃんの頃から親との関係性のなかで育まれていきます。

しかし、いじめや裏切り・恋愛関係のトラブルなど、信頼感を否定される体験は、誰のことも信用できなくさせます。

「誰も信用できない」気持ちは、孤独感やネガティブな感情を引き起こすだけでなく、対人関係の問題や不登校、適応障害など生活に支障をきたすこともあります。

再び誰かを信じられるようになるのは、簡単なことではありません。

でも、信頼できる人との出会いによって、また人を信じられるようになります。

だから今は自分のペースで慎重に、安心できる場所を探しながら人と付き合ってみてください。

安心できる場所がないという人は、こちらの記事も読んでみてくださいね▼

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